現在はどんぐり運びをしていないのか。富士山にドングリが置かれていた件では「熊森協会ではないか」と疑惑もかけられていた。森山氏に尋ねると「標高が高くクマなどいない。おふざけとしか思えない」と否定した。また、「最近は日本熊森協会は基本的にドングリ運びはしていない」とも答えた。
しかし、日本熊森協会のホームページを検索すると、2022年11月の活動報告の記事に「今年は山の実りの大凶作年ではないので、ドングリ運びはしません」と記載されている。また、20年11月の記事でも「熊森が運んだドングリをクマたちが食べています」とも書かれていた。どんぐり運びを前提にした記述のように見える。どういうことか。
森山氏に再び尋ねると「支部によっては大凶作年にやる地域もある」と発言を修正したうえで、こう主張した。
「今はクマが山の下のほうにまで下りて来てしまっている。ここで奥山にドングリを置いても効果がありません。本来であればドングリを運ぶべきですが、ここまで下りて来るとできない」
そして、より大きな論点を示した。
「私たちはこの根本的な原因は、人間がクマの住みかだった奥山に人工林や道路を多く造ったことや、人間活動による急激な温暖化で天然林内も大荒廃していることだと見ています。水源の森を守るために、人間が奥山から撤退することが必要だと考えています」
ドングリを巡る見解は対立したままのようだ。クマが冬眠するまであと少し。ドングリ問題は再燃するのか。
(AERA dot.編集部・吉崎洋夫)