クマのためにドングリを山に持ち込むという行為は以前からあるようだ。北陸地方のある自治体担当者はこう語る。
「今年はまだ来ていませんが、ドングリが凶作の年になると『ドングリを山に運びこんだらどうか』という電話が来ることがある。私どもの立場からしたら、そのドングリをどこから持ってくるのか、また、置く場所の権利関係はどうなるのか、という問題が出てきて簡単ではない。そもそもそれが有効だという科学的データも見たことがありません」
専門家はどう見るか。富士山を管轄する環境省関東地方環境事務所に尋ねると、「環境省としては推奨できるような行為ではない。生態系を壊す恐れがある」と見解を述べた。
生態系にどう影響を及ぼすのか。兵庫県立大学自然・環境科学研究所の横山真弓教授に話を聞いた。
ドングリと一口に言っても、その種類は様々だ。種類によって生息する場所は異なる。また、ドングリの中に虫が入っていることもある。ドングリを全国から集め、山の中に置いてくることによって、その地域の生態系を乱す可能性があるという。
「ドングリは豊作と不作を繰り返し、その中でクマなどの動物も増減を繰り返します。クマを保護することで、クマの数だけが増えてしまったり、ドングリを食べるねずみだけが増えてしまったりと、生態系のバランスを壊すことにつながります」