AERAで連載中の「この人のこの本」では、いま読んでおくべき一冊を取り上げ、そこに込めた思いや舞台裏を著者にインタビュー。
ロシアのウクライナ侵攻、イギリスのEU離脱など、現代の国際情勢は各国の歴史を知るとよくわかる。インド、中国、フランス、グローバルサウス、アメリカなど、世界情勢を理解するうえで欠かせない国と地域を、地政学の視点も入れて解説する『歴史で読み解く!世界情勢のきほん』。著者である池上彰さんに同書にかける思いを聞いた。
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インドはなぜIT先進国になったのか、ドイツはなぜ多数の難民を受け入れたのか──頭の隅にあった疑問がするすると解けていく。
池上彰さん(73)の新刊は九つの国と地域を取り上げ、それぞれの立場から世界がどう見えるのかを教えてくれる。
「たとえば、ロシアは国境線が長く、北は氷に閉ざされているから、どうしても南に行きたくなる。自分の国を守るために、さらにその先に行きたいという思いもあるわけです」
地理的条件と政治の関係を探る地政学の見方を取り入れ、歴史をひもといていく。
「地理と歴史の両方を描くことによって、現代の世界が立体的に浮き彫りになることを目標にしています」
テレビの印象が強い池上さんだが、自分の本業は本の執筆だという。
「もともと原稿を書く記者になりたくてNHKに入ったんです。だから、文章を書いたり、ああでもない、こうでもないと推敲したりしているのが楽しいんですね」
島根県の松江放送局での新人時代には、ラジオ用の原稿の書き方を徹底的に叩き込まれた。言葉だけで映像が浮かぶ文章がここで鍛えられた。
池上さんのわかりやすさの原点もNHK時代にある。
夕方6時のニュースのキャスターをしていた時、政治部や経済部の記者の原稿があまりにもわかりにくく、デスクと「これでは視聴者がわからない」「わからないのはお前がバカだからだ」と激しくやり合った。
その闘いを毎日続けるうちに、「こんな原稿では、また池上に怒られる」とデスクが目の前で書き直すようになっていく。わかりやすいニュースなら池上さんということで、「週刊こどもニュース」のキャスターに選ばれた。