朝日新聞記者・玉置太郎氏は、住民の三割以上が外国籍で日本でも指折りの移民集住地、大阪・ミナミの「島之内」という地域に住んでいる。同氏が毎週火曜に行くのが「Minamiこども教室」だ。この教室に集まる子どもたちは皆、移民のルーツがある。教室では、ボランティアが一対一で子どもの隣に座る。この「一対一」を、教室は大切にしてきた。親の多くが夜の飲食店で働いているため、子どもたちは大人が自分だけに向き合ってくれる時間を求めている。ロンドンの大学院で「移民」について学んだ玉置氏の新著『移民の子どもの隣に座る 大阪・ミナミの「教室」から』(朝日新聞出版)から一部を抜粋、再編集し、移民のルーツをもつ子どもたちを支える「Minamiこども教室」で大切にされていることを紹介する。
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来日したばかりの子は、日本語の学習に取り組む。「あいうえお」から教えることも時々ある。日本での新生活に対する不安と期待から、彼らには学習に向き合う切実さがある。
もちろん、勉強そっちのけでおしゃべりをしたがる子も多い。学校であったこと、親の愚痴、いま夢中になっているアニメのあらすじ……。とりとめもない話にただ耳と心を傾けることも、ボランティアの大切な役割だ。
十五分ばかりの休憩時間には、みんな解き放たれたように遊び回る。大人と一緒に鬼ごっこや腕相撲をしたり、ホワイトボードに落書きをしたり。わずかな時間なのに、オセロやトランプを持ち出す子もいる。
小学校低学年の子どもたちは、おんぶや相撲の相手を求めてくることが多い。夜に働く親とはすれ違いの生活で、大人との直接の触れ合いが足りていないようだ。