午後六時から八時前までの学習を終えたら「終わりの会」をする。次週のお知らせをして、新しく教室にやって来た子の紹介をして、最後に当番の子のかけ声に合わせてあいさつをする。

「ボランティアさんの方を向いてください。ボランティアのみなさん、ありがとうございました」「気を付けて帰りましょう。さようなら」

 たった二時間。それでも、隣に座った大人との「一対一」の二時間を経て、子どもたちはどこか朗らかで、しなやかな顔つきになっている。

 小学生は数人ずつのグループに分かれ、ボランティアが自宅前まで送っていく。道すがらにぽつりと漏らす言葉が、その子の本音だったりすることも多い。

 ほとんどの子どもは島之内の中層マンションに住んでいる。一人でエレベーターに乗るのを怖がって、自室の前まで送ってほしがる子もいる。開いたドアの隙間から見える玄関の様子に、あるいは顔をのぞかせた親の表情に、子どもの生活の「荒れ」を感じることもある。

 教室では最後に、ボランティアみんなでミーティングを開く。自分が隣に付いた子どもの学習内容や気になった様子を共有する。

「この子は九九の七の段がまだあやしいから、また確認してあげてください」

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子どもにとっての「必要」が、いつも先にある。