気候変動や人口増加などから今後、ますます足りなくなる世界の食料。中国・アジアの食料・農業問題や、世界の飢餓問題を専門に研究する、愛知大学名誉教授で、同大国際中国学研究センターフェローの高橋五郎氏は2つの解決方法を提案する。『食料危機の未来年表 そして日本人が飢える日』(朝日新書)から一部を抜粋、再編集して紹介する。
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耕作放棄地の把握と整備を
世界を飢餓から救うには、まずは食料の生産を増やせる国は増やし、各国が責任を持って、能力不足の国に対しては国連が支援することとし、主要穀物に関する世界統一的な価格補償制度を設置しながら小売価格水準を下げることである。主要な穀物生産国に限れば生産量が増えていることも事実で、ウクライナやロシアはともかく、アメリカ・ブラジル・オーストラリア・カナダ・アルゼンチン・インド・タイ・ミャンマー・ベトナムなどが重量当たり利潤率の低下を販売量の増加でカバーできればさらなる増産が可能となり、貧困国がかなりの量を輸入できるレベルまで価格が下がる期待が持てる。
この10年間に限ると世界の主要穀物の生産量は小麦19.0%、コメ5.7%、トウモロコシ29.9%、大豆44.8%とそれぞれ増加している(AMIS農業市場情報システム・2011年のG20で設立)。しかし短期間の動き、2021/22年度から2022/23年度の1年間では、小麦0.6%増、コメが2.4%減、トウモロコシ3.7%減、大豆10.5%増の見込みであり、全体としては、2040年頃までならばなんとか微増傾向を維持しそうである。