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 途上国を中心に広がる食料不足。今後、さらに深刻化していくことはわかっているが、実は世界中で耕作放棄地は増えている。愛知大学名誉教授で、同大国際中国学研究センターフェローの高橋五郎氏の著書『食料危機の未来年表 そして日本人が飢える日』(朝日新書)から一部を抜粋、再編集して解説する。

【写真】戦前は食糧増産のために空き地を利用

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 時代や環境の変化に合った食料供給システムの改革が、地球レベルで必要となっている。しかし、相変わらず利益優先の土地利用だけが幅を利かせ、その結果、大量に生まれているのが耕作放棄地。食料の需要が供給を大幅に上回っているのに、その生産基盤である耕地の無視できない面積が遊休地となってしまっている。工場設備に例えると、つくれば売れる需要は十分あるのに設備が古く、つくるたびに赤字が出るので放置しておくようなものだ。

 世界の耕地面積は地球の土地面積の約38%に当たるが、穀物生産にそのうちの79%、すなわち地球の土地面積の約30%がそのために使われている(FAO[国連食料農業機関])。しかし耕地の半分以上がわずか10か国程度の国に支配されているのが現実である。

 世界には経営耕地が1ヘクタール未満の約4億3000万戸の小規模農家がいる(FAOSTAT[FAO統計])が、大部分の耕地を持つのは大規模農業経営者である。

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高橋五郎

高橋五郎

高橋五郎(たかはし・ごろう) 1948年新潟県生まれ。農学博士(千葉大学)。愛知大学名誉教授・同大国際中国学研究センターフェロー。中国経済経営学会名誉会員。専門分野は中国・アジアの食料・農業問題、世界の飢餓問題。主な著書に『農民も土も水も悲惨な中国農業』2009年(朝日新書)、『新型世界食料危機の時代』2011年(論創社)、『日中食品汚染』2014年(文春新書)、『デジタル食品の恐怖』2016年(新潮新書)、『中国が世界を牛耳る100の分野』2022年(光文社新書)など。

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世界の全耕地の10%程度は耕作放棄地