実は、世界の正確な耕作放棄地面積の合計は不明である。すでに耕作放棄された耕地が雑木雑草地や荒野に戻るのには2年か3年あれば十分である。その結果、耕地だったことを調べる術も見失われやすいからでもある。
世界の大部分の耕地には細かな制度上の見分け方が存在しないので、現在は、定期的に人工衛星を使った識別をたよりに、耕作放棄地を探り当てる方法が主体となっている。
コペンハーゲン大学(デンマーク)やドイツのライプニッツ移行経済農業開発研究所などが中心となって取組んでいる、世界の耕作放棄地とその要因の研究(「世界の耕作放棄地の軌道と進行要因の多様性の解明」2021年)は、耕作放棄地がさまざまな原因から世界各地で起きている実態を明らかにしようとしている。
彼らの研究によると、中国、ミャンマー、ネパール、ポーランド、スロバキア、南アフリカ、スウェーデン、アメリカでは、環境問題(干ばつ、土砂崩れ、洪水、土壌流出)、土壌汚染、人種差別、限界耕地からの離農、民族紛争、農業経営の不採算、後継者不足(高齢化)など複雑な原因が絡んでいるという。
残念ながら、この研究は耕作放棄地の面積データ自体を明らかにしていない。しかし、国によって異なるものの、概ね全耕地の10%程度は耕作放棄されていることを示唆している。