三菱が即座に対応しなかったのも無理はない。0.1133%から0.05775%に引き下げると自社の取り分がほぼ半額になる計算。この値下げは苦渋の選択だっただろう。だが、三菱UFJアセットは身を削って投資家のさらなる信頼を得たようだ。追うほうも必死だろうが、追われるほうもつらい。まさに仁義なき戦い──。
一方、S&P500は信託報酬の最安が0.09372%で下げ止まっており、今のところ変化はない。そして2022年以降、S&P500が乱高下となったことで米国株への一点集中投資を避ける人が出てきた。
S&P500乗り換え
具体的には、S&P500の投資信託から、全世界株式の投資信託へ乗り換える(または全世界株式の比率を増やす)人が増えてきたのだ。米国株100%の投資信託から、米国株が60%ほど入りつつ(23年9月末現在)、日本や英国などの先進国株、中国やインドなどの新興国株も入った全世界株式へ。
今は米国が世界経済の覇権を握っているが、今後10年、20年経ってもナンバーワンという保証はない。「ならば、どこの国がトップになってもいいように全世界株式」という考え方だ。
新NISA開始後、全世界株式がトップとなるか、S&P500が1位のままか。結局のところ米国株がよければS&P500への資金流入が加速するし、そうでなければ全世界株式に流れる傾向が強いので「相場次第」な部分は、あるが。(経済ジャーナリスト・向井翔太、編集部・中島晶子)
※AERA 2023年10月16日号