その話を聞いて、私は、個人営業の日本の電気工事業者に聞いてみた。彼らの多くは、大手電力会社や建設業者の下請けで仕事をすることが多く、収入はかなり少ない。ある業者にアメリカで働きたいとは思わないかと聞いたら、できることなら行ってみたい気はするが、「英語ができませんからね」という返事だった。

 もちろん、アメリカで仕事をするには、ビザの問題もあり簡単ではない。しかし、技能工がいないために、住宅建設コストが非常に高くなり、しかも工期が遅れる傾向にあるということは、経済にとってマイナスだ。カナダでも、建設関係の専門職が不足して工事が滞っていると米ABCニュースが伝えていた。

 そこで誰でも考えるのは、日本から、優秀な電気工事士や配管工など、欧米で不足している専門技術者を「輸出」する人材紹介・派遣業を始めることだ。語学の問題は、欧米の専門家を招聘して事前に最低限の日常会話と専門用語の勉強をさせて解決する。受け入れ国の出入国管理当局と建設業監督当局と日本政府が交渉して、協力の取り決めを行えば理想的だ。

 そう言うと、日本も工事関係の専門職が不足していると反論する人がいるだろう。しかし、足りないなら普通は賃金が急上昇するはずだが、いまだに諸外国に比べて非常に低い賃金しか払えないのだから、海外でもっと良い機会があるのなら、それを活かす方が本人の幸せのためだ。日本の専門学校を卒業したら、アメリカで働くというコースがあっても良い。

 日本の若者を外に出すだけだと限界があり、また日本の産業に打撃かもしれないので、それを緩和するために、外国人労働者を大量に招いて専門技術を習得させたのちに、その一定割合を海外に「輸出」するということが考えられる。

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「人材加工立国」、「出稼ぎ立国」を目指す