これまでは、女性や高齢者の就業率(働く人の割合)が高まることで、少子高齢化による労働力不足が緩和されてきたのだが、これも限界に近づきつつある。
出産を機に退職する女性が多く、子育て世代の女性の就業率が大きく下がるいわゆるM字カーブが日本では欧米諸国に比べて顕著だったが、今やそれもかなり解消された。女性就業率はイタリアなどよりかなり高くなっていて、米国を上回っている。スウェーデン、ドイツなどに比べるとまだ低いので、若干の向上はありうるが、大きく上がると期待するには無理がある。
また、高齢者についても、全雇用者に占める65歳以上の割合は、22年に過去最高を更新し、10.6%。米国7%、ドイツ4%などに比べてかなり高い。
一方で、意外なことに70歳以上の賃金は、過去10年で9%も減少している。ということは、無理に働いている人が多く生産性が上がらないので、企業が賃金を上げられないということを意味する。60歳以上の労災死傷者数(新型コロナ感染を除く)が22年には5年前の26%増の3万8千人になったことも相当無理に働いている人が多いことを示唆している。もちろん、生きがいのために働くという人もいるし、今後ロボットの普及で高齢者のサポートが可能になるという話もあるが、高齢者の就業率を上げて労働力不足を補うのはそろそろ限界だと考えるべきだろう。
こうして見てくると、国内の労働力不足を国内で解決するのはほとんど無理だということがわかる。日本は移民を受け入れる以外に生きていけない国になったのだ。
これに対して、政府は、依然として、本格的な移民受け入れという建前は取っていないものの、背に腹は代えられないということで、人身売買との批判が絶えない外国人技能実習制度の廃止を含め、技術移転ではなく、人手不足対策を主眼とした新たな制度を設ける方向だ。