互いの違いを認め合い、目の前のことに夢中になる。小学5年生の木下己楽(みらく)くんも、クラブのこうした雰囲気に惹かれた一人だ。
己楽くんは小1の頃、父親の仕事の関係で香港に移り住んだ。初めての海外にして、英語と広東語に囲まれる生活。インターに入学してすぐ、言葉の壁にぶつかった。
そんな己楽くんと友達をつないだのが、5歳から習っていたラグビーだった。母の佑子さんは当時をこう懐かしむ。
「イギリス領だった香港はラグビーが盛んなので、英語が話せなくても仲良くなれる。気づけば英語でラグビーの指示を出すようになっていました」
失敗は「アンラッキー」
ラグビーの技術はもちろん、語学力もぐんと伸びた。その後、日本に帰国。いくつかのクラブでトライアルを体験し、今年1月からSIRCに入会した。複数のラグビークラブを見てきたなかで、佑子さんは気づいたことがある。
「日本はラグビーに限らず、何かしらミスをすると『何やってんだよー』と言われ、反省して次に生かす流れが多いと思います。でも、香港も渋谷もミスをしたときに言われるのは『アンラッキー』なんです」
「運」に任せることを現実逃避と思うだろうか。だが、怒られないことと反省しないことは必ずしも結びつくわけではない。佑子さんは言う。
「子どもはそのプレーから何かしらを学び、次に生かしていく。ミスしても責められないというのも、子どもが伸び伸びできるポイントだと思います」
(編集部・福井しほ)
※AERA 2023年9月18日号より抜粋