渋谷インターナショナルラグビークラブのモットーは「世界中に友達をつくる」。マイペースに楽しむ子もいれば、プロに憧れる子も(撮影/今 祥雄)
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 互いの違いを認め合い、多様性を尊重する──。そんなコミュニケーション力の重要性がますます高まっている。ラグビーという競技が持つ教育的なポテンシャルを取材した。AERA 2023年9月18日号より。

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 色とりどりのヘッドキャップをかぶった子どもたちが芝生のうえを走り回る。ぶつかり、ときには転んだり。あちこちから、楽しげな声が聞こえてくる。

 都内の最高気温が34.6度を記録した9月の日曜日。東京都世田谷区にある昭和女子大学のグラウンドで、「渋谷インターナショナルラグビークラブ(SIRC)」の子どもたちがラグビーの練習に励んでいた。

 ラグビーといえば、屈強な選手たちと、骨のぶつかり合う鈍い音が頭をよぎる。だが、この日はタックルの代わりに腰につけたタグを奪う「タグラグビー」と子ども向けに考案された「ミニラグビー」の練習日。4歳から12歳までの子どもたちが集まり、思い思いにボールをパスしあう。周りのコーチからは、

「エクセレント!」

「ビューティフォー!」

 のかけ声が飛び交う。日本語はほとんど聞こえてこない。

「いろんなバックボーンの子が集まるのがこのクラブの特徴で、イタリアやイングランド、中国など15カ国の子どもたちが所属しています」

 そう説明するのは、クラブを設立した徳増浩司さん。2019年、日本中を熱狂に巻き込んだラグビーワールドカップの日本招致の立役者でもある。

「ワールドカップで世界中から日本に人が集まりました。それを途絶えさせないためにも、インターナショナルなクラブを作りたかった」

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