「本来なら、全国の中学生が修学旅行で海外に行くぐらいが理想的なのです。とはいえ、実際問題として全国一律を目指していると物事は何も動きません。一種の“悪平等”になってしまうより、財政に余裕がある自治体は独自施策として見切り発車し、修学旅行で海外に向かう公立中学生を増やしていくのが現実的ではないでしょうか。行ける余裕がある自治体なら、どんどん行ったほうがいいのです」(親野氏)
22年10月、経済協力開発機構(OECD)は教育機関における公的支出の割合(2019年時点)を発表した。OECDの加盟国でデータある37カ国のなかで、日本はわずか2・8パーセント(平均4・1%)。順位は36位という低水準だった。
「ノミとガラスの蓋の寓話(ぐうわ)があります。本来ノミは高い跳躍ができるのですが、コップに入れてガラスの蓋をすると跳躍力が下がってしまう。蓋を取っても跳躍力は低いまま。そこに本来の跳躍力のあるノミを新たに入れて高く跳躍する姿を見せる。すると跳躍力が下がっていたノミもまた本来の跳躍ができるようになるという話。つまり、修学旅行で海外に行ける自治体が出れば、それを見た他の自治体も『うちもできるはず』となり、それが広がっていく可能性があるということです。そもそも予算というものは、『あるようでなかったり、ないようであったり』するものです。教育のために公的支出を増やすという意思を強く持てば国レベルでも自治体レベルでもなんとかなるものです」(同・親野氏)
港区の“炎上事例”として終わらせずに、公教育全体の底上げという議論につながることを期待したい。
(井荻稔)