その理由は何か。親野氏は「中学生が海外を訪れるメリットは極めて大きい」と述べたうえで、こう語る。
「特にシンガポールは多民族国家であり、世界中から観光客が訪れる人気スポットでもあります。文化資本も充実しており、シンガポールに旅行することは世界を見ることと同義です。教育的な価値は計り知れません。また普通の中学生は英語を『授業だからやる』『受験に必須だからやる』といった受け身の姿勢で学んでいることが多いと思いますが、シンガポールでは実際に英語を使うことができます。英語学習のモチベーションにつながることも期待できます」
Xでは「中学生の修学旅行なのだから、海外の文化に触れるより、伝統的な日本文化を体験するほうが価値がある」という意見も多くみられた。シンガポールより京都、奈良のほうが修学旅行先にはいいという指摘に対してはどうか。
「『日本文化が重要だ』という指摘は正論だと思います。とはいえ、『海外に行ったことで日本文化について何も知らないことを痛感し、帰国してから学ぶようになった』といった経験をした留学生も珍しくはありません。世界を見ることで自国文化の重要性を再認識することもあります」(親野氏)
港区の修学旅行で、自治体間の格差が浮き彫りになったのは事実だろう。とはいえ、その責任は中学生には全くないことは言うまでもない。