筋力をつけるには、けがをしない範囲で少し無理をする(負荷をかける)ことが必要です。その際の注意点として、高齢者の場合には、体力強化に向けた「攻めの姿勢」と、転倒やけがなどの事故を防止するための「守りの姿勢」のバランスをとることが大切です。

「筋トレやジョギングをおこなう場合には、強度(筋力の出力度、ジョギングなら速度)を徐々に高めることが効果的で、筋力アップ・筋量アップ・ジョギングのタイムの短縮が期待できます。その一方で、ケガの確率が上がらないようにするために、適量のトレーニングを計画的にこなし、常に身体のケアを怠らないことが肝要です。シニアの場合、負荷のかかる運動は、週に3回、1回20分くらいが適切でしょう」(田中氏)

 高齢者が鍛えたい筋肉としては、まず脚があげられます。歩いたり、からだを起こしたり、移動させたりする能力の維持のため欠かせません。主なものとして、大腿四頭筋(だいたいしとうきん、太ももの前側の筋肉)、ハムストリングス(太ももの裏側の筋肉)、下腿三頭筋(かたいさんとうきん、ふくらはぎの筋肉)、前脛骨筋(ぜんけいこつきん、すねの筋肉)、腸腰筋(ちょうようきん、上半身と下半身をつなぐからだの中心部の筋肉)などがあげられます。

「ただし、強化すべき筋肉は、その人が健康か否か、どんなスポーツを楽しみ続けたいか、車いすや杖を常用しているのかなどによっても個々に異なりますので、それぞれの人に合ったトレーニングメニューを選ぶべきでしょう」(田中氏)

 おなか回りをスッキリさせたいなど、ダイエットを目的に運動する高齢者もいるでしょう。もっと切迫した悩みとしては、減量して健康的になるため、そして将来介護を受けたくない、自分の足で歩き続けたい、趣味の旅行を楽しみたいなど、さまざまな思いがあると思います。

 そこで、テレビCMなどでおなじみのライザップ社に話を聞いてみました。同社は若い人や働き盛りの人のダイエット、筋トレだけでなく、高齢者向けの筋力強化プログラムにも力を入れています。同社のシニアプログラムは健康寿命の延伸のため、とくに足腰の強化に力を入れているといいます。プログラムの開発に携わった同社の川本裕和(かわもと・ひろかず)さんに、その特徴について聞きました。

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転倒防止と持病への配慮が重要