シニアが安全かつ効果的に筋力をアップするにはポイントがあります ※写真はイメージです (c)GettyImages

 人生100年時代、自立した生活を長く送るためには、要介護状態になるのを避ける、できるだけ遅らせることが重要です。そのカギのひとつは、立ち上がるときや転倒の防止に必要な「筋力」にあります。本連載では、年齢を重ねた親と子が一緒に考え、取り組んでいきたい「シニアの筋トレ」についてお届けしていきます。5回目は、高齢者が安全かつ効果的に筋力アップするための方法について、プライベートジムを運営するライザップ社のシニア会員向けプログラムの実践例も参考にしながら紹介していきます。

【図版】スポーツ医学の第一人者、田中喜代次氏がすすめるプログラムはこちら(全2枚)

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第1回:人生100年時代は「筋力」が財産 「指輪っかテスト」で転倒・骨折リスクをチェックしよう
第2回:シニアは「肥満」より「やせ」に注意 「健診の高い数値も、必ずしも一律に下げる必要はない」と専門家
第3回:シニアでも「体力アップ」はできる 今の体力年齢が分かる「テスト」と「計算式」を開発者が紹介
第4回:10年で2、3歳しか老けない高齢者は何が違うの? 老年科学者がすすめる「健幸華齢(けんこうかれい)」とは

 これまでの連載で、高齢者が介護の要らない動けるからだを保ち、健康寿命を延ばすためには、筋力が衰えないように鍛えることが欠かせないことがわかりました。今回はいよいよ、どうやって筋力アップをしていけばよいのか、高齢者に適した方法、具体的な内容に迫っていきたいと思います。

 高齢期に入って体力の低下が進み、特に筋力が低下すると、歩行や階段の上り下りの動作でふらついたり、とっさの際に障害物を避けられなくなったり、日常生活での動きがスムーズにおこなえなくなったりします。こうした老化による体の衰えを自覚するようになると、「もう年だから」と自分で決めつけてしまって諦めたり、家族からも「もう無理するな」と言われたりして、体力作りに挑戦する気持ちも失っていってしまいがちです。

 しかし、体力は急にがくっと低下するのではなく、徐々に低下するものです。そして、いくつになっても始めるのに遅すぎることはありません。体力の衰えを感じたらできるだけ早い段階で、「老化の速度にブレーキをかける気持ち」に切り替えることが重要になります。シニアが体力づくり、筋肉トレーニングを始めるに当たって、まず大切なことは、人生を最後まで前向きに「生き抜く気持ちのスイッチ」をONにすることなのです。

 次に、高齢者に適した運動として、どのようなプログラムを組むべきなのか考えてみましょう。60歳以上になると、日常生活を円滑に過ごすための体力「生活関連体力」の重要度が高くなっていきます。そのため、「筋力と同時に、バランス感覚・上手に細やかに動く力・すばやさ・柔軟性などの『調整力』を強化することが非常に重要になる」と、スポーツ医学の第一人者で筑波大学名誉教授の田中喜代次氏は話します。調整力のトレーニングには、複合的な動きを必要とする運動を取り入れるとよいそうです。それによって、転倒しにくいからだを作ることができ、転倒したときの骨折防止、認知症の予防などにも役立つそうです。

「調整系のトレーニングの中で、安全性と有効性の両方を満たす種目として、水中運動(アクアビクス)や水泳がおすすめです。ただ、いつでもどこでもできる種目ではないので、例えばシニアが気軽に取り組めるグラウンドゴルフ(目標頻度:週3日)に、筋トレ(同:週3日)とテレビ・ラジオ体操または「シルバーリハビリ体操」(同:毎日)を組み合わせるとよいでしょう。グラウンドゴルフの代わりに、卓球、バドミントン、太極拳、ボウリング、ダンスなどを楽しむことも有効です」(田中氏)

 ポイントとして、過去に経験のない種目を始めれば、ゼロからのスタートとなり、やればやるほど上達し、熱中できて習慣化する人が多いそうです。

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シニアの筋力づくりは、どれくらいの負荷が適切か