2023年7月26日、パキスタンのガッシャブルム I 峰頂上で(本人提供)
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――石川さんは写真家としてフィルムカメラで撮影することを大切にされています。今回もそうなさるのですね。

石川 僕は登山家では決してありません。写真家として山に登っているという気持ちが強くあります。1グラムでも背負う荷物を軽くすべき8000メートル峰の登山で、あえて中判カメラとたくさんのフィルムを持っていくのはそれだけでも大変で、傍から見たらアホな行為でしょう(笑)。山麓から頂上に至るまでつぶさにフィルムによって記録していく。こうした撮影ができるのは自分だけじゃないか、という思いもあります。現在の登山者は、スマホやコンパクトデジカメを頂上に持っていくことがほとんどですが、それに比べたらはるかに重たいですよ。

――何度も8000メートル級登山を共にしてきたシェルパの存在感が変わってきているそうですね。

石川 10数年前とは全く違いますね。昔は登頂のサポートに徹していましたが、今は彼らが表舞台に出てきて、自分たちの登山をするようになりました。今回の自分の遠征も、友人のシェルパが主催しています。成功したら僕と一緒に14座の登頂を果たすシェルパも何人かいるはず。友人のダワ・ヤンザムという女性シェルパもその1人。シェルパの女性では初めてですね。

 シェルパの変化は、世代交代もあるでしょうし、コロナ禍も少し関わっているかもしれません。海外の登山者やトレッカーが入って来られなくなり、彼らは一時的に仕事を失いましたが、一方で冬のK2に初登頂を果たすなど、自分の登山遠征に出かけていった。登山に対する考え方も変わっていますし、SNSも活用するようになって、若いシェルパの活躍は目覚ましいものがあります。

 今回、もしも14座登頂を果たせたら、ヒマラヤ・カラコルム遠征は一区切りにしようと思っています。23歳の時にエベレストに登ってから22年ものあいだ、関係を続けてきたわけですから、もうそろそろいいかな、と。日本でもいろいろやらなくてはいけない仕事があるし、約束していながら書けていない本もあるし。今回の遠征で撮影した写真は、展覧会や写真集の形でいつものようにシェアしていきますので、楽しみにしていてください。

――どうぞお気をつけて。成功をお祈りしています。

(構成/ノンフィクションライター・千葉望)

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