そう話すのは、福岡市立こども病院アレルギー・呼吸器科科長の手塚純一郎医師です。手塚医師は同院のこどもアレルギーセンター長も務め、日本小児アレルギー学会、日本小児臨床アレルギー学会などの理事としてアレルギー疾患の適切な治療のため、医療者、家族、学校、行政など多職種との連携や啓蒙に尽力しています。
「基本的には、個別包装されたものは必ず表示を見ること。また中食や外食では、見た目でわかるものは避ける、形がなくて何が入っているかわからないものは食べないようにすることしか、完全に避ける手段はないのが実情です。もし飲食のあとで、ふらふらする、血圧が下がっている感じがする、悪寒がする、息が苦しい、といったショック症状が出た場合は、アナフィラキシーかもしれないので即座に救急車を要請してください」(手塚医師)
クルミ以外では、カシューナッツのアレルギーも確実に増えてきています。カシューナッツのたんぱく質はピスタチオのたんぱく質と似ており、また、日本ではまだそれほど一般的ではないもののペカンナッツ(ピーカンナッツ)のたんぱく質はクルミとよく似ています。このため、今後はピスタチオやペカンナッツのアレルギーも増えてくる可能性がある、と二人の医師は口をそろえます。
ちょっと小腹が空いたときのおやつにも、また、おしゃれな料理の食材としても重宝するナッツ類。おいしいけれど、アレルギー症状の原因にもなり得る食べ物だということを、頭の片隅においておくとよいかもしれません。
(取材・文/梶葉子)
【取材した医師】
昭和大学病院小児科教授 今井孝成(いまい・たかのり)医師
1996年東京慈恵会医科大学医学部卒業、昭和大学医学部小児科学講座入局。独立行政法人国立病院機構相模原病院小児科医長を経て、2012年昭和大学医学部小児科学講座講師、18年同准教授、19年から現職。日本小児科学会、日本アレルギー学会、日本小児アレルギー学会などで理事を歴任。「食物アレルギー診療ガイドライン2021」などの作成に中心的に携わり、行政、教育機関などへの食物アレルギーの啓発、各自治体の食物アレルギー情報発信などにも尽力。
福岡市立こども病院 アレルギー・呼吸器科科長 こどもアレルギーセンターセンター長
手塚純一郎(てづか・じゅんいちろう)医師
1998年九州大学医学部卒業、九州大学病院小児科入局。九州大学病院小児科、国立病院機構福岡病院小児科、国立病院機構福岡東医療センター小児科医長を経て、2015年から現職。日本アレルギー学会、日本小児呼吸器学会、日本小児アレルギー学会、日本小児臨床アレルギー学会などで理事を歴任。食物アレルギーをはじめとするアレルギー疾患の啓蒙や、アレルギーの患者や家族に関わる多職種の連携推進に精力的に活動。
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