また、「漢字が読めないことが子どもたちの興味を狭めている可能性がある」と強調する。

「以前、『漢字が苦手なために嫌いな教科はあるか』、と調査で聞いたことがあります。そのとき『社会』という答えが多かったのですが、これは難解な漢字語句が他の教科と比較して多いからだと考えられます。先の『山月記』の例では漢字が読めることで生徒たちは同作の良さに気がつくことができていた。同様に、漢字を読むことができれば、他の教科の楽しさを感じることができるようになるのではないかと思います」

 ルビ財団は、生成AIなどのテクノロジーを活用して、サイト上でルビの有無をボタン一つで切り替えられるシステムを開発しており、今後これを無償で提供していくという。同財団のHPには既に実装されており、総ルビ表記を体験することができる。松本氏は言う。

「着想のきっかけは子どもの学習でしたが、ルビを振ることは、インクルーシブ(包括的)な社会を作ることにもつながると思います。それは子どもが興味を追求できる社会であり、外国人にも優しい社会でもあり、そして、大人にとっても情報量が増える社会です」

 松本氏が構想する“総ルビ社会”は日本にどのような変化をもたらすのだろうか。

(AERAdot. 編集部・唐澤俊介)

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唐澤俊介

唐澤俊介

1994年、群馬県生まれ。慶應義塾大学法学部卒。朝日新聞盛岡総局、「週刊朝日」を経て、「AERAdot.」編集部に。二児の父。仕事に育児にとせわしく過ごしています。政治、経済、IT(AIなど)、スポーツ、芸能など、雑多に取材しています。写真は妻が作ってくれたゴリラストラップ。

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