やまおか・こうしゅん/名古屋大大学院教授。地震予知連絡会会長、前日本地震学会会長、南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会委員(撮影/添田孝史)

 例えば、プレート境界の断層がゆっくり動くスロースリップと呼ばれる現象が知られるようになりました。それが発生したときに、引き続いて巨大地震になる確率はどのくらいなのか、よくわかっていないのです。

 リアルな観測と、コンピューター上に構築したモデルを比較して、観測された出来事を解釈したり、進展を予測したりする「デジタルツイン」という手法が地震研究の分野でも進んでいます。これを使って、地震学者が自分の経験や知見で「心配だ」「何かおかしい」と判断したことが、どのくらい地震発生につながるか確率で表現し、その精度を上げていく研究が、今後の一つの柱になると思います。コンピューターそのものの進歩もあるし、機械学習やAIの発展もそれを支えてくれるでしょう。

 関東大震災が起きたころは、宇宙から人工衛星を使って地震の研究をすることは全く考えられていませんでしたが、それは大きな力となりました。次の100年は、地下に直接触って、測れるようにしたいですね。

光ファイバーが面白い

 長さ何キロもある光ファイバーを岩盤に固定すると、どこが伸び縮みしているか測れるような技術が開発されています。ボーリング技術も画期的に進めて、日本列島の地下10キロぐらいのところに、毛細血管のように光ファイバーを張り巡らせることができれば、地下の様子をつかまえる精度は格段に向上するでしょう。今は宇宙から地表の変化を観測して、そこから地下の変化を間接的に計算で求めているのと比べ、地下の光ファイバーなら直接確かめることができるわけです。

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