仙台育英(宮城)の湯田統真投手(撮影=写真映像部・東川哲也)
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 甲子園球場を覆う銀傘の影が押し寄せるマウンドで、仙台育英の背番号10が右腕に力を込める。

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 1回裏、花巻東の佐々木麟太郎を迎えた場面だ。湯田統真は初球にカーブを選択した後、2球目からはストレート1本で勝負に出る。5球目には今大会最速となる151キロ。最後は149キロでピッチャーゴロに討ち取った。

「自分のマックスをぶつけて流れを持ってこようと考えていた」

 勝手に投球の出力が上がったとも言う湯田に対し、仙台育英の須江航監督はゲームの流れをこう見立てていた。

「3回(序盤)の攻防で、試合の流れが決まると思っていた。(三回戦までの)花巻東さんは粘り強い立ち上がりを見せていましたし、どうしても『3回の攻防』で勝ちたかったので、先発投手はギリギリまで悩みました。湯田は、ストレートが素晴らしかったですし、スライダーも、要所でのチェンジアップもよかった。試合前のブルペンの感じもすごくよかったので、今日は『行けるな』と思った」

 湯田が2イングスを完璧に抑え、3回表に打者一巡で4点を先制、勢いそのままに4回表にも4点を加えた仙台育英にしてみれば、思い描いていた勝利への道筋だったか。

 花巻東の佐々木洋監督は言う。

「何とか守って最少失点で行きたかったんですが、3回、4回にビッグイニングを作られて……」

 耐えて、凌いで守り抜く。接戦に持ち込めば、「いろんな攻撃ができただろうし、各打者のバットの振り方も違うものになっていたと思います」と佐々木監督は言う。

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