「今日、国語の授業で◯◯さんがね……」。放課後の職員室では、教員たちが日中のできごとや児童の様子を情報交換する姿も(撮影/天田充佳)

 中学校では、教職員の多忙化の大きな要因となっている部活動対策とも連携している。部活動は主に5時間授業の日に実施。6時間目の時間帯に活動をスタートし、終了時刻を早めることで週あたり3時間の放課後時間を生みだしている。

 この改革で、5年前は1カ月平均61時間だった小学校教諭の時間外勤務が今年度同月では33時間となった。中学校教諭の時間外勤務は2年前の月79時間から53時間となっている。

気持ちにゆとりができた、効果を実感する声が多数

 同市教育委員会の調査によると、教職員からは「子どもたちと話す時間が増えた」「教材研究の時間がとれるようになった」「気持ちにゆとりができた」など、効果を実感する声が多く上がっているという。また、児童生徒(小5~中3)の84%が「以前よりも放課後が充実して、ゆとりを持てるようになった」と回答している。

「今年度、ほかの市から異動してきたのですが、環境の違いに驚きました」

 こう話すのは、松前台小で5年2組の学級担任を務める小林綾さん(43)だ。

図画工作の専科担任の山野正三さんによる授業が行われている間、学級担任は、職員室で別の業務にあたっていた(撮影/天田充佳)

 給食を終えた午後1時45分。5年2組では5時間目の図工の授業が始まった。授業開始から間もなく、小林さんは教室を出て職員室に向かった。教室には図画工作の専科担任の教員がいるからだ。教室では、子どもたちの歓声があがる。

「これは、先生がみなさんと同い年ぐらいの時に描いた絵ですよ」

「えーっ、すごーい」

 職員室に移動した小林さんは、前日の道徳の時間に児童が提出したノートをチェックし、一人ひとりにコメントを書いていく。前任校では放課後に行っていた業務だ。

 学級担任が、子どもたちが授業を受けている間にこうした時間を確保できるのは、同市の小学校が「教科担任制」を導入しているからだ。

 小学校では、これまで学級担任が全教科の授業を担当してきたが、国が教員の負担軽減や授業の質の向上につながるとして推奨しているのが高学年での「教科担任制」だ。国が予算化したのは22年度だが、同市では20年度にスタートさせた。

 現在、5、6年生の理科、音楽、図工の授業で実施し、市の独自の予算で常勤、非常勤合わせて15人の専門教員を雇用している。

 さらに、松前台小では高学年の学級担任が3、4年生のクラスで書写と外国語の授業を担当する。高学年での「教科担任制」で生み出した週7時間を中学年の担任の授業時数削減につなげているのだ。

 教頭の成島和之さん(55)は、教科担任制が教員の負担減だけではなく、児童生徒理解の面でもプラスに働いている、と実感を語る。

「先生方も自身が受け持つ学級や学年以外で授業を行うことで、学校全体を見渡すことができるようになってきています。職員室でのコミュニケーションも増え、より和やかな雰囲気になった気がします」

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