はらだ・たかし/大阪市の公立中学校に20年間勤務。保健体育指導、生活指導に注力。原田教育研究所代表取締役社長
はらだ・たかし/大阪市の公立中学校に20年間勤務。保健体育指導、生活指導に注力。原田教育研究所代表取締役社長

 驚かされるのは、大谷選手が目標達成のための八つの思考に、「運」と「人間性」を入れていることだ。

 人間性を高めるために「感謝」や「礼儀」を、運を高めるために「ゴミ拾い」をすると書かれている。大谷選手は試合中にグラウンドに落ちていたゴミを拾ってポケットに入れたことが話題になった。原田さんは言う。

「清掃という意味があるだけではなくて、自分を高めるために拾っているんです」

■具体的な数値や行動

 完璧に見える大谷選手のシートだが、原田さんからすると、「ブラッシュアップできます」。

 例えば「体づくり」に対する行動目標に「スタミナ」と書かれているが、「いつまでに」「何をする」「何%に上げる」とより具体性があれば、目指すところが明確になるだけではなく、後になって自分の行動の評価や検証もできる。

「目標をシートや日誌を書いて文字にしたことが、大谷君の活躍を裏で支えていると感じます。シートや日誌を書くことは、心を整理することなのです」(同)

 大切なのは毎日続けることだ。シートは壁に貼って、毎日見るようにする。シートに書いた行動をルーティン化すると実行しやすい。ルーティンをチェック表にまとめて、毎日できたかどうか○×を付けていく。そして、日誌を書いて、できたこと・できなかったことを仕分けし、思考を整理し、目標達成に向けて明日はどうするか考える。それが習慣化につながるという。

 仲間と続けることも継続のコツだ。大谷選手は北海道日本ハムファイターズに入団してからも続けた。日ハムの選手教育ディレクター本村幸雄さんが、原田さんの教師塾で教育メソッドを学んでおり、日ハムの若手選手の育成にメソッドが取り入れられたからだ。本村さんの指導を受けて、大谷選手は目標を立てて日誌を書き、シートを作っていた。原田さんは言う。

「渡米するまで少なくとも8年間は続けています。既に習慣化していて、自分を律することができているのでしょう」

 初めてシートを作るとき、すべてのマスが埋められないかもしれない。

「最初は違和感があってもすべて埋めてください。ChatGPTに聞いてもいいですよ。少しずつ修正を重ねていき、完成したシートを見たとき、『これならできそう』という気持ちになることができたら、それが成功の道筋です」(同)

(編集部・井上有紀子)

AERA 2023年7月24日号より抜粋

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