多くの人が不可能だと考えていた“二刀流”で異次元の活躍を続ける大谷翔平選手。目標を次々と実現できる陰には、高校時代に出合い、卒業後も続けてきたあるメソッドの存在がある。AERA 2023年7月24日号の記事を紹介する。
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投打二刀流で世界を席巻している大谷翔平選手。今年はWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)でMVPを獲得し、シーズンでも本塁打で両リーグトップを独走する。次々に夢や目標を実現させる力はどこから湧いてくるのか。あるメンタルトレーニングに秘密がある。
高校1年の冬、まだ甲子園に出場したことのない大谷選手の目標は、「8球団からドラフト1位指名」だった。
教育専門家の原田隆史さんは言う。
「普通は『甲子園出場、優勝』を目指すでしょう。それが、大谷君の中で何らかの思考のイノベーションが起きて、強烈な目標を掲げるようになったのだと思います」
大谷選手にイノベーションを起こしたものは何か。原田さんは「二つの自信、自己効力感と自己肯定感です」と指摘する。自己効力感は、自分はできるんだという自信、自己肯定感は、自分は幸せになる価値があると感じる気持ちのことだ。それらを養ったのは、なんと「日誌」だという。
実は、大谷選手の母校である岩手・花巻東高校野球部では当時、原田さんの教育メソッドを一部取り入れていた。日誌はメソッドの一つだ。
原田さんは元公立中学校教員。荒れた教育現場を立て直し、陸上部を全国大会優勝に13回導いた実績をもつ。教育現場の経験をもとに人材育成手法「原田メソッド」を確立。五輪の金メダリストなどスポーツ関係者だけではなく、有名企業もメソッドを学んだ。花巻東高校野球部の佐々木洋監督は、原田さんがかつて主宰した学校の教師のための私塾「教師塾」で学び、大谷選手ら野球部員を指導した。
日誌には、今日の目標のほかに、今日のよかったこと、やり直したいこと、課題などを書く。
「日誌を書き続けると、自分ができたこと、うまくいったことなどがたまっていきます。『なぜうまくいかなかったのか、次はどうすればいいのか』も書くので、失敗に見えることも次の成長のステップへと変えられます。日誌は自信の貯金通帳なんです」(原田さん)
その日誌も、目指したい未来の夢や目標があってのこと。まずは、長期目標を作るのが原田さんのメソッドだ。