「比嘉企画」代表取締役としての顔も持つ。書類仕事をするのは得意。考えを整理するときには文字を書いてまとめる。手紙を書くことも多い。「本当に伝えたいことは、LINEじゃだめなんですよね」(撮影/篠塚ようこ)
「比嘉企画」代表取締役としての顔も持つ。書類仕事をするのは得意。考えを整理するときには文字を書いてまとめる。手紙を書くことも多い。「本当に伝えたいことは、LINEじゃだめなんですよね」(撮影/篠塚ようこ)

 店員を辞めpecoの所属事務所に移籍し、タレントとしての道も探り始めた。あるときpecoの彼氏としてテレビの取材を受けた。「彼氏として出るのに、女の子っぽいのはどうなんだろう?」と悩み、自分を隠した。結局、オンエアではカットされた。友人たちに告知もしたのに、と恥ずかしさと悔しさでいっぱいになった。そんなryuchellにpecoは言った。

「ryuchellらしくなかったからやん。てこ(peco)はいつものryuchellが好きだよ」

 その言葉で吹っ切れた。やっぱり自分は、自分でいなくちゃいけない。その後はありのままの自分を全開にし、番組スタッフの目にとまり「行列のできる法律相談所」に出演。司会の明石家さんまにおもしろがられ、ブレイクした。前出の同級生・山田とAqua rooveは声をそろえて言う。

「キャラを作っていると思っていた人も多かったみたいだけど、まったく普段どおりで、高校時代から変わらない。なんならテレビ用にマイルドにしてる?って、同級生みんなが思いました」

 当時からマネージャーを務める片山朝子(32)はryuchellを「瞬発力がある」と評する。

「しかも柔軟で、人の意見をちゃんと聞こうとする。髪の色などルックスは常に変化するけれど、しっかりした考え方や、ぶれないところは変わらない」

 2016年にpecoと結婚。22歳で1児の父となり、忙しい日々は続いた。16年、17年はほぼ休みなし。バラエティー番組に多数出演し、紅白歌合戦にもゲスト出演。そんな日々のなかryuchellは次第に消耗していった。

 原宿時代は「オンリーワンな個性」の戦いだった。芸能界では「おバカタレント枠」の戦いになった。番組でひとつしかない枠を奪い合う。さらに、ここでも「嘘がつけない」苦しさが生まれた。

「バラエティー番組では思っていないことを言わなきゃいけないときもある。『おいしい!』とか『これ流行(はや)ってる!』とか。大人にならなきゃ、とこなせるときもあったけど、やっぱりつらくて」

 結局、ryuchellという人は正直すぎるのだ。

 どこにでも馴染(なじ)めるバラエティータレントにはなりきれなかった。が、世はSNSの時代。YouTubeも話題になりだしていた。テレビにこだわることはない。

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