「あの子誰?」「可愛い!」
高校で男女から注目される

 ファッション面でもアメリカンカルチャーにどっぷり影響された。ジャスティン・ビーバーにブリトニー・スピアーズ、「シークレット・アイドル ハンナ・モンタナ」などの米ドラマ、ビジュアル系ロックバンドの美しい男性たちにも憧れ、自分もああなりたい、と思った。

 しかし中学に入ると状況は一変した。

 ryuchellは、沖縄の中学校はヤンキーがトップに君臨するカースト社会だという。入学早々、上の階から新入生めがけて唾が降ってきた。しかし絶対に上を向いてはいけない。見上げてしまった友人は即、呼び出されてボコボコにされた。

「中学では目立ったらアウト。目を付けられないようにファッションはもちろん、話し方や好きなものが女の子っぽいということを必死に隠していたんです」

 孤立する勇気はなかった。ヤンキー友達とほどよく付き合い、自分を隠して振る舞った。

「自分の好きなものを我慢するだけじゃなく、自分を捨てていく作業だった。それは、自分が弱いからなんですけど」

 中2で初めてメイクをした。外では見せられない自分を発散したかったのだ。中3からツイッターに写真をアップした。もちろん鍵アカウントで、誰にもバレないように。この自分を殺した3年間が、その後のryuchellを決定づけた。もう自分を偽りたくない。地元の友達もいない、自由な高校へ行こう。そして選んだのが、学区外の県立北中城高校。実際、そこはパラダイスだった。

 高1からの親友・山田祐也(26)はryuchellとの衝撃的な出会いを覚えている。

「入学式のとき、りゅうは赤髪だったんです。僕も僕の親もびっくりしたけど、でもすごく可愛かった。話しかけたらしゃべり方もめちゃくちゃ可愛くて。『りゅうちゃん、って呼んでもいい?』『嬉しいです!』みたいにして仲良くなった」

 山田が特別だったわけではない。やはり高校の同級生で現在アーティストとして活動するAqua roove(アクアルーヴ)(27)も証言する。

「僕はバスケ部でモテたいがために部活をやっていたようなものなのに、りゅうのほうが断然、男子にも女子にも注目されていました。『あの子誰?』『可愛い!』って」

 学年に一人は「ryuchellみたいになりたい!」と真似(まね)する男子がいた。そこにある「可愛い」に男女の区別はなかった。

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