所持金6万円で上京
テレビ番組出演でブレイク

 高1から「りゅうちぇる」の名で堂々とツイッターを始めた。プロフィルは「ちぇるちぇるらんどの王子様」。お気に入りのコーデや「盛れた」メイクをアップし続け、フォロワーは2万人を超えた。それが憧れの東京行きにつながった。

「高校を卒業したら、うちの店で働いてみませんか」。原宿の人気ショップからDM(ダイレクトメッセージ)を受け取ったのだ。「行きます!」と即決した。猛反対する母を説得し、卒業と同時に飛行機に飛び乗った。焼き肉屋での時給630円のアルバイトでためた全財産の半分を母に渡し、残りを上京資金にあてた。

 所持金は6万円。東京に知り合いはいなかったが、不安はまったくなかった。

 だが、すぐに厳しさに直面する。ショップには全国各地からスカウトされた個性的な子たちが集まってくる。みな店で働きながら雑誌の読者モデルとして有名になりたいと、火花を散らしていた。人とかぶらない、オリジナルな個性が何より必要だった。「負けたくない!」と、少ない給料は洋服代に消えた。毎朝、出勤時には体重チェックもある。竹下通りのケバブ屋やクレープ屋を横目に、スルメを囓(かじ)り、マシュマロで糖分を補った。

 3カ月もすると、竹下通りで「ryuchellさんですか?」と声をかけられるまでになった。未来はまだ見えないけど、どうにかやっていけるかもしれない。そんなとき店に後輩として入ってきたpecoと出会った。

 pecoは大阪出身。高校在学時から「カリスマモデル四天王」と呼ばれるほどの人気者だった。ブロンドのウェーブヘアに愛らしい瞳。動くバービー人形のような彼女に一目ぼれをした。

「可愛いだけじゃなくて『自分』を持っている。こんな人がいるんだ!って、衝撃でした」

 pecoもまったく同じことを感じていた。

「理想の人が目の前に現れた!って思いました。自分の力だけで上京して、甘ったれたところがないのも、かっこよかった」

 メイクをしている男の子に会ったのは初めてだったが、違和感はまるでなかった。すぐにお互い思い合っていることがわかり、恋が実った。東京での生活が、ハッピーに輝き始めた。

 いっぽうでryuchellは別の壁にぶち当たっていた。店員に向いていないことに気づいたのだ。

「僕は本当に嘘が下手というか、どうやっても似合っていない服をお客さんに売れない。『こっちのほうが似合わない?』とか一生懸命やっていたんですけど、苦しくなっちゃって」

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pecoの言葉で吹っ切れた