直感を信じて生きてきた。時代を嗅ぎ分ける「嗅覚はあるかも」と自己分析する。「いま10代だったらティックトッカーになっていたと思います」(撮影/篠塚ようこ)
直感を信じて生きてきた。時代を嗅ぎ分ける「嗅覚はあるかも」と自己分析する。「いま10代だったらティックトッカーになっていたと思います」(撮影/篠塚ようこ)
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  タレントのryuchellさん(27)が7月12日、亡くなったことが判明しました。AERA 2022年9月5日号の現代の肖像では「自分らしさを隠していた経験があるからこそ、同じような悩みを持っている人に寄り添える」と語っていたryuchellさん。現代の肖像の全文を掲載します。(年齢などは当時)。

【写真】「僕は可愛いし、生きます。そしてあなたも、生きて」

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 タレント・比嘉企画代表取締役、ryuchell。7年前、金髪にメイクをほどこし、ハイテンションなキャラクターでテレビに登場したryuchellは、世間をあっと驚かせた。今では、ryuchellの言葉にも注目が集まるようになった。ダイバーシティー、子育て、沖縄についてと話題は幅広い。ryuchellはいつも自分に正直に生きようとしている。その生き方は、きっと私たちの価値観をも変えていく。

 廊下の先にあるそのドアからは、エキゾチックで甘い香りが漂っていた。室内に入ると、赤と紫に彩られた空間が広がる。壁を飾るのはバービー人形、お菓子のパッケージ、LP盤のレコード……。芸能事務所とは思えない雰囲気に圧倒されていると、「はじめまして」と、はにかんだようなryuchell(りゅうちぇる)(26)の顔がのぞいた。黒髪に大きな瞳。少し日に焼けた肌にほどこされたメイクがナチュラルで、最高に可愛らしく、かっこいい。

 7年前、初めてテレビに登場したときの印象は強烈だった。金髪にヘアバンド、1990年代からタイムスリップしてきたような“ダサかわ”ファッションにキラキラなメイク。ハイテンションなキャラクターでガールフレンドのpecoぺこ)(27)とのラブラブぶりを見せつけ、あぜんとする周囲をみるみるうちに自分のペースに巻き込んでいく。

 その存在は大げさでなく、当時の日本人の旧態依然としたジェンダー感覚を揺さぶったといっていい。21歳でpecoと結婚。22歳でパパとなり、そのスピード感あふれる展開が、常に世の注目を浴びてきた。

 そして現在。芸名を「りゅうちぇる」からアルファベット表記のryuchellに改め、自らの事務所「比嘉企画」を立ち上げた。さまざまなメディアで子育てについて語り、ダイバーシティーやSDGsなど社会の課題についても発信する。SNSで放たれるまっとうで真摯(しんし)なメッセージは多くの人の心に刺さりまくり、ニュース番組では祖母から聞いた沖縄戦について語り、若者たちに「歴史を忘れないで」と呼びかける。YouTubeチャンネル登録者数は48万3千人を超えた。

 彼は変わったのか? いや、ryuchellはいつも自分の気持ちに正直に生きようと、もがいてきた。

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好きなものが同世代の男の子とは違った