一方、経管栄養にしたとしても、それがすぐに終末期を意味するのかというとそういうわけではない。

「胃ろうをして栄養を補給しながら口から食べるための取り組みをして、食べられるようになった方もいらっしゃいます。経管栄養をしたことで元気になっていけば、それは回復の過程にあると考えます。経管栄養が本人にとって苦痛だったり、ぐったりしてしまったりということであれば、正直難しいのかもしれないと考えます」(安田さん)

 朝日新聞の元論説委員で国際医療福祉大学大学院教授の大由紀子さんは、身内を延命後に看取った経験がある。

「経管栄養で延命をすることへの批判が強かった時期もありましたが、叔母は胃ろうをして10年近く、住み慣れた家で穏やかに過ごしました。家族、皆が生きていてほしかった。だから胃ろうを選びました」

 大熊さんは隣のマンションに一人で暮らす認知症の母を在宅ケアで支えた経験も持つ。退院したときはオムツで寝たきり。それが、福祉用具やヘルパーの助けで歩けるようになり、悪性リンパ腫と診断されてから5年、95歳まで自宅で過ごし、穏やかに息を引き取ったという。(大崎百紀)

週刊朝日  2023年6月2日号より抜粋

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