マスコミの側も、ワイドショー等で連日、長時間かけて「旧統一教会と政治の関係」を取り上げるTBS、日本テレビと、政党や政治家側の対応を取り上げるだけで、旧統一教会問題自体を積極的にはほとんど取り上げようとしないフジテレビ、NHKなどと、対応が分かれた。
当初、連日、「羽鳥慎一のモーニングショー」「大下容子ワイド!スクランブル」等で旧統一教会問題を取り上げていたテレビ朝日も、7月18日に出演した有田芳生(よしふ)参議院議員(当時)が、「『政治の力』で旧統一教会に対する捜査が中止された」と発言して、番組が「凍り付いて」以降、ワイドショーでは一時期取り上げなくなった。
このように安倍氏銃撃事件後において、この問題をめぐるメディアの対応が極端に分かれたことの背景に、「安倍元首相を殺害した犯人の思う壺にしてはならない」という意見が影響しているように思えた。
■「犯人の思う壺」論の横行
元自民党副総裁の高村(こうむら)正彦氏は、過去に、統一教会の訴訟代理人を務めたことについて週刊文春の取材を受け、「勝共連合と統一教会がいいか悪いかは別として、この事件で統一教会が取り上げられることは、テロをやった人の思う壺なので正しいとは思えない」などと発言した(週刊文春、2022年7月28日号)。この意見が、一部で「正論」と受け止められたようで、同様の意見がツイッター等のSNS上でも目立った。
もちろん、意図的に人の命を奪う「殺人行為」は、誰に対するものであっても、絶対に許容できるものではない。また、犯人の意図どおりの結果となり、目的が実現してしまうことが、模倣犯や同様の殺人行為の誘発につながるというのであれば、そのような犯罪の抑止のために万全の対策をとる必要がある。
しかし、殺人事件一般について考えた場合、犯人が意図したとおりの結果になることが、「犯人の思う壺になる」として、必ず避けるべきということにはならない。