厳しい職場環境から、ブラックな仕事と言われるようになった「教師」という職業。その激務の原因の一つが、部活動の顧問だ。経験がない競技の指導を任され、休日返上で長時間労働を強いられる。しかもそれは本来の仕事ではない――。「顧問は拒否できる」と呼びかけ、引き受けるかどうかを選べる職場をめざして2021年に設立された任意団体「全国部活動問題エンパワメント(PEACH:ピーチ)」。参加する組織は全国に広がり、現在は北海道から九州・沖縄まで24団体を数えるほどになった。部活の指導を学校外に委ねる「地域移行」が進むなか、PEACHの代表で愛知県の小学校教諭、加藤豊裕(あつひろ)さんに、顧問を強いられる教師たちの現状について聞いた。
【図】「なめているのか」。教員たちを困惑させた、裁判所が仕分けた残業内容
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過労死ラインを超えた教職員の長時間労働が問題視され、文部科学相が2017年に決定した「学校における働き方改革に関する緊急対策」で、部活動は「学校の業務だが、必ずしも教師が担う必要のない業務」として位置づけられた。
「これを機に、この問題を明るみに出したいと思いました」
加藤さんは部活に苦しめられている教員のための教職員組織として、教職員組合「愛知部活動問題レジスタンス(IRIS:アイリス)」を立ち上げ、21年11月に組合としての登録が認められた。そして翌月にPEACHを結成した。
教職員組合といえば、日本教職員組合(日教組)や全日本教職員組合(全教)などがあるが、なぜ部活動専門の組合を立ち上げたのか?
「この問題をあくまでも『労働問題』として貫き通すためです。どうしても既存の組合だと、最終的に『教育』という話に持っていかざるを得なくなってしまう。『教育問題』というのは子どもが主体ですから、『先生が我慢するしかないよね』という話で終わってしまう。今までずっとそれを繰り返してきた。それに、部活の問題というのは、子どもや保護者、教員、学校、競技団体、大会スポンサー企業と、利害関係が複雑に絡み合っていて、既存組合はその全部に配慮した物言いになってしまいがちなんですよ」