実際に18年に公表された文科省の委託調査研究「公立小学校・中学校等 教員勤務実態調査研究」によると、教員が部活の顧問として必要な技能を備えていない場合、メンタルヘルス不良になる傾向が明らかにされている。

■「できない」と言えない

 先に書いたように、部活は「学校の業務だが、必ずしも教師が担う必要のない業務」という位置づけだ。しかし、教員は校長などの管理職から「部活の顧問になってもらえますか」と尋ねられることもなく、何かの顧問を務めることが「当たり前」になっている。

「もちろん『何部がいいですか』くらいは聞かれますよ。でも、顧問をやる、やらない、ということは聞かれない。なので『断れる』という発想が思い浮かばない。さらに、まわりから白い目で見られるんじゃないかとか、浮いちゃうんじゃないかという恐れがあって、顧問となることを受け入れている教員は大勢いると思います」

 教員の採用試験でも、「部活の指導ができるかどうか」を質問されることも珍しくないという。「この質問をやめてほしい」と県教育委員会に請願を出した加藤さんに、県教委からは次のような回答があった。

「昨今の働き方改革で部活動への見方も随分変わってきていると思うが、現状ではまだ学校教育活動の一環として大きな意義・役割を果たしている。そうした部活動に対して、これまでどのように取り組んできたか、現場で指導できる力量があるかを問うことは、そのことだけで採用の可否を決定することはないが、一つの要素としてあっても良いと思う」(「22年9月5日「請願第23号」の議事録から)

 加藤さんは言う。

「つまり、面接官は部活の顧問をやれる人なのかを見ているわけです。尋ねられたほうは事実上、『部活の顧問はできません』とは言えないから、不適切な質問だと思います」

■対策は打ち出されたが

 文科省が4月に公表した昨年度の「教員勤務実態調査」(速報値)によると、教諭の1日当たりの平日の在校等時間(10、11月)は、小学校が10時間45分、中学校が11時間1分。前回16年度の調査に比べて30分ほど短くなったが、長時間労働の状態は依然として続いている。

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