米大リーグ・大谷翔平の活躍によって、最近は高校球児を取りあげた記事でも「二刀流」の文字をよく目にするようになった。ただ、昔から高校野球ではエースで主力打者というのは良くある話で、打撃を生かすため登板時以外は別のポジションにつく投手も珍しくなく、「二刀流」とは言われていなかった。「何でもかんでも『二刀流』と呼ぶのはおかしい」。本来は価値ある呼称が“乱用”されている現状に首をかしげる野球ファンもいる。
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とある地方の高校球児を取りあげた記事。投手と野手を兼任する選手について「二刀流の~」と紹介していた。投打の両方で注目されている球児について「二刀流」と書いた例もあった。
「二刀流」を辞書で調べると「二つの物事を同時にうまく行えること」とあり、確かに誤用ではないのかもしれない。だが、記事へのコメントを見ると、
「高校生で『二刀流』って当たり前だよね、何でもかんでも使えばいいって訳じゃないよ」
「高校野球のピッチャーはみんな二刀流!」
「野球センスのある子は投手も野手もやるのが普通!」
と二刀流の使い方に疑問の声が上がっていた。
目下、「二刀流」で大リーグを席巻しているエンゼルスの大谷翔平。今年のオールスターにも2年連続で投手、打者の両方で選出される快挙を成し遂げた。
2012年のドラフトで日本ハムに1位指名された大谷。高卒後の大リーグ挑戦を公表していた大谷に対し、日本ハムが投手、打者双方で育成する方針を提示。前代未聞の「二刀流」挑戦がここから始まり、メディアには「二刀流」のキーワードが踊るようになった。その後の大谷の活躍は説明するまでもなく、われわれは型破りな伝説の目撃者となっている。
大リーグでは今季から、先発投手が打順に入る場合は、マウンドを降りたあとも指名打者として試合に出場し続けていいルールが採用された。このルールが適用されるのは事実上、大谷ただ一人のため「大谷ルール」とも呼ばれている。「二刀流」の価値は、大リーグのルールをも変えたのである。