【太田和彦さんオススメの大阪の名店】
ここでは本来の大阪らしさを持っている名店を三つ紹介しよう。
●大阪阿倍野 明治屋(めいじや)
阿倍野再開発の広大な空地にただ一軒、孤高の存在だった明治屋はついに取り壊され、新ビル「あべのウォーク」に入ったが、玄関周りも店内もすべて昔のままに再現して常連を感涙させた。居酒屋は内装を変えてはいけない、をここまで徹底したのは快挙だ。昔通りのカウンターでいつもの酒を飲む。大阪居酒屋の最高峰は「聖地」として残った。
●大阪上町 ながほり
島之内で実力をたくわえていた「ながほり」は、上町に移って酒蔵をイメージした理想の店を実現した。酒蔵古材を柿渋で仕上げた店内は日本酒の「気」があふれる。復活地野菜をはじめすべて生産者に会って確かめた素材の前人未到の料理に一流ホテル料理長も通う。でありながら「うちは居酒屋です」と言い切る、名実ともに日本の居酒屋の最高峰。
●大阪南田辺 スタンドアサヒ
ごく平凡な店構えがいつも超満員。安価が信じられない丁寧な料理は老練な父と働き盛りの息子。そしてしゃきっと通る声で差配する美人娘クミコさんの獅子奮迅(ししふんじん)が生みだす明るい活気。お年寄りと子供連れ一家も来ているのがこの店の良さで、お値打ちな品をにぎやかに楽しみながら一杯やる大阪居酒屋の実力と健全あふれる、創業80年を超えた名店。