2年連続のア・リーグMVPなるかが注目されていた大谷翔平選手が、シーズン終了を待たずにエンゼルスと1年3000万ドル(約43億5000万円)で契約合意した。だがこれは言ってしまえば単なる“時間稼ぎ”。今後に想定される展開にはいくつかのパターンが思い浮かぶ。
その前に、大谷の契約状況をおさらいしておこう。今季がメジャー5年目の大谷は年俸調停の権利を有していた。年俸調停は簡単に言うと、選手側と球団側がそれぞれ希望年俸額を提示し、中立的な立場の裁定人がどちらかを選んで来季年俸とするもの。折衷案の採用はなく、必ずどちらかの言い分が完全に通る仕組みだ。
もっとも年俸調停の権利を持っているからと言っても、実際に裁定人による公聴会まで行くケースは少ない。たいていはその前に選手側と球団側の交渉によって新たな契約が結ばれ、調停を回避するからだ。その契約年数に単年か複数年かの違いはあるが、今回の大谷もこの調停回避のケースに該当する。
ただし、この契約合意を持って大谷がエンゼルス残留に前進したと見るのは早計。今回の契約期間が1年ということは、大谷はこれまでと変わらず2023年オフにフリーエージェントとなる。つまり冒頭で触れたように、最終結論を先送りするための“時間稼ぎ”にしかなっていないのだ。
気になる今後の展開だが、大谷の去就については2人のスター選手がモデルケースとなり得る。1人目はムーキー・ベッツ外野手だ。
レッドソックスで走攻守の揃った外野手として早くから頭角を現し、2018年にはア・リーグMVPも獲得したベッツは、20年1月に1年2700万ドルでレッドソックスと契約して年俸調停を回避。これは今回の大谷までは調停回避の1年契約として史上最高額だった。
ベッツは20年シーズン終了後にFAとなる見込みで、その点は大谷と同じ。当時のレッドソックスは10年3億ドルの大型契約を提示してベッツ引き留めを図っていた。しかし結果的にベッツは1カ月後の2月にドジャースへトレード。新型コロナウイルスの影響で開幕が遅れたこの年の7月には12年3億6500万ドルでドジャースとの長期契約を果たした。