高齢化による患者数の増加もあり各地で外科医不足が問題となる中、医師の働き方改革が進められている。今年、日本胸部外科学会が発表した内容によれば、外科手術の件数は増加傾向にある一方で、外科医の数は増えてない状況が示された。他の診療科の医師は増えているにもかかわらずだ。好評発売中の週刊朝日ムック『医学部に入る2023』では、医師の働き方改革への外科医の期待と不安を取材した。なぜ外科医は増えないのか。働き方改革は、外科医の労働環境改善につながるのだろうか。
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医療行為の中で、最も重要なものの一つである手術を一手に担うのが外科医だ。盲腸などの小さなものからがんや心臓病などの大手術、また交通事故などの外傷治療も、外科医がいなければ始まらない。
ところが近年、外科医の数が増えず、医療機関では常に外科医不足が問題になる事態が続いている。一方で、高齢化が進む日本では、手術を必要とする患者は増加しており、外科医の業務や労働時間はますます増える傾向にある。
■増えない外科医と増える手術
そのような状況の中、医師の働き方改革が進められている。医師の働き方改革は、一般の企業などで2019年4月から順次施行されている「働き方改革関連法(働き方改革を推進するための関連法律の整備に関する法律)」の医師版だ。現在すでに準備期間として、医師の診療以外の業務を削減し労働環境を整えるため、看護師や医療事務職などに可能な仕事を割り振るタスクシフティングやICT化の推進など、さまざまな取り組みが各医療機関でおこなわれている。さらに24年4月からは、医師の時間外労働規制が実施される。
医師という職業は患者の命と向き合うため、専門性が非常に高く業務の内容も多岐にわたる。また夜間や休日には宿日直も必要で拘束時間も長い。外科医の場合には特に顕著で、手術の後に当直をし、そのまま朝から外来診療といった長時間勤務もしばしば耳にする。難しい手術では10時間を超えることもまれではない。働き方改革によって、外科医の労働環境は変わるのだろうか。