手術は一人ではできない。医師だけでなく看護師や臨床工学技士などさまざまなスタッフが、チーム一丸となって取り組む喜びもある。

「みんなで一つの目的に向かって努力した結果が、患者さんのプラスになって喜んでもらえる。その素晴らしさを一度味わうとやめられません。外科はリスクがあると言われますが、どの科でも大なり小なりリスクはあります。試行錯誤していかに最も良い結果を出すか、そして、それを次の患者さんにどう生かすか。何年経ってもやりがいを感じます」(安田医師)

 また将来のキャリア形成を考えたとき、外科医の特性が有利に働くことも多い。

「少子高齢社会で手術は今後も増えるし、いろいろな業務ができる外科医はどこへ行っても引く手あまたです。もちろん開業も可能ですし、病院内のキャリアについても、守備範囲の広さやチームマネジメントをおこなう立場から、経営幹部や院長職への登用も多い。仕事への幸福感・充実感とともに、さまざまな可能性を実現できる科でもあると思います」(藤井医師)

 国民皆保険でいつでも医療が受けられ、手術のレベルも高い日本の医療には安心感がある。外科医の生活の質が守られ、仕事に喜びを感じて働くことができるよう、働き方改革が十分機能すること、そして、外科医を志す人が今後増えていくことを期待したい。

(文/梶 葉子)

安田卓司医師

日本胸部外科学会政策検討委員会委員長/近畿大学医学部外科学教室上部消化管部門主任教授

1986年大阪大学医学部卒。同付属病院第二外科医員、大阪府立成人病センター外科、大阪大学大学院医学系研究科、近畿大学医学部外科学教室助教授、准教授を経て2013年から現職。

鈴木健司医師

順天堂大学医学部呼吸器外科学講座主任教授

1990年防衛医科大学校卒。自衛隊横須賀病院で臨床研修後、国立がんセンター東病院、同中央病院呼吸器外科を経て2008年から現職。

藤井 努医師

富山大学学術研究部医学系 消化器・腫瘍・総合外科教授

1993年名古屋大学医学部医学科卒。同第二外科、米マサチューセッツ総合病院、名古屋大学大学院医学系研究科消化器外科学准教授を経て、2017年から現職。

※週刊朝日ムック『医学部に入る2023』より

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