「私の元に相談に来られる方の多くが、自分の家の片付けと同じやり方をして、実家の片付けに失敗した方々です」
こう話すのは、実家片づけアドバイザーとして活躍する渡部亜矢さん(実家片づけ整理協会代表理事)。なぜ実家の片付けで失敗を招いてしまうのか。それは「自分の家の片付けと実家の片付けは、ゴールが違うことを認識しないまま進めてしまうから」だという。
「自分の家を片付けるゴールは、奇麗にすることであり、楽に家事ができること。一方、実家の片付けのゴールは、『親が安心・安全・健康に暮らせる家』。特に重要なのが、親の家の主は親で、子どもではないということ。実家の片付けは、あくまで親が主体の片付けなのです」(渡部さん)
高齢になると部屋が散らかりがちになる傾向もある。体力の低下や、新しいものを取り入れたがらなくなる価値観の固定化に加え、世帯人数の変化も要因の一つだ。子どもを含めた家族での生活から夫婦二人の生活になり、最終的には一人の生活へと、世帯人数が変化していく。そうなると、例えば鍋一つとっても、ファミリーサイズを使っていたのが、子どもが家を出た後に夫婦二人用の鍋を買い、その後は一人用の鍋を買う。これまで買った鍋は処分しないまま、物が増えていくという構図だ。
「今の70代、80代は、物があるのが豊かさの象徴という時代を生きた世代で、物を捨てることに罪悪感を抱く人が多い、いわば“もったいない世代”。複数の部屋がある戸建てに住んでいても、ほとんどの部屋が物置と化し、暮らしのスペースとして機能しているのは一部屋だけ、というお宅もたくさん見てきました」(同)
■スッキリ片付けすぎないもコツ
とはいえ、「面倒だから……」「片付けが苦手」と後回しにしてしまう人は多い。しかし、渡部さんは「親が60歳になったら、たとえ元気でも実家の片付けを手伝ったほうがいい」と強調する。なぜなら、これからの生活を健康で元気に暮らすためにも、片付けたほうがメリットが多いからだ。