片付けの第一歩は「捨てる」ことをメインに考えるのではなく、「使いやすい状態にする」のを優先させること。例えば日頃よく使うものが出しづらい位置にないか、定位置が決まっているかを確認し、使いやすさを考えた整理をする。

「物の順番を入れ替えるだけで、劇的に使いやすくなることがあります。必ずしも捨てることにこだわらなくても、置き場所さえ変えれば片付く場合も多い」(同)

 また、認知症になると、家具の配置や壁のシミなどで自分の家を認識していることもある。そのため、家具の配置を変えたり、勝手に処分したりすることで、親が戸惑ったり、かえって生活しづらくなる場合もある。

「親が自分なりに住みやすいようにしていた空間を、必要以上に崩す必要はありません。また親に無断で物を捨てるのもNG。一見、使っていなそうな物であっても、親にとっては大事な思い出が詰まった物という場合もあります。捨てるときは必ず確認してからにしてください」(同)

 次に、【2】について。

「親には、正論も理屈も通用しないということを肝に銘じておくのをお勧めします」とは、前出の渡部さん。「こうしたほうが便利」「この置き方のほうが効率的」など、子ども世代が自分たちの理論で正しいと思うことは、ほとんど通用しないと思っておいたほうが良い。それが子どもから見てどんなに不便なことでも、親にしてみれば、過去何十年とそうやってきたという経験に裏打ちされたもの。親の習慣を優先して片付けることが前提だ。

「勘違いをしてはいけないのが、親の家は親の家であって、子どもの家ではないということ。親が生きているうちは、親のための片付けにほかならないのです。そのため自分本位で片付けるのではなく、あくまで親ファーストで考えること。自分がやりたい片付けをやるのではなく、親が過ごしやすい空間に整えるのが大切です」(永井さん)

 最後に【3】。ゴールを共有することは、実家の片付けを成功させるか、失敗に終わるかを握るカギにもなる。失敗を避けるためには、まずは「親が安心・安全・健康に暮らせる家」が、「奇麗にスッキリ片付いている家ではない」という認識を持つこと。高齢者の片付けは、“奇麗さ”を優先させるのではなく、ケガや転倒を防ぐ片付けを目指したほうが良い。その上で、「健康で長生きしてほしいから、そのために片付けよう」「このままじゃ危ないから、一緒に防災のことを考えて片付けよう」などと親世代に伝え、共通のゴールを目指す。

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