著名人や身近な人の結婚はおめでたい話。だが、それを知った人への直接的影響や実害はないはずなのに、なぜときにネット上で批判や中傷コメントが書き込まれたり、現実社会でもチクリとものを申したりする人がいるのか。対人心理や恋愛心理を研究する専門家は、その根っこには人間誰もが持つ「嫉妬の心」が働いていると指摘する。
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年の瀬にネットなどで報じられた、とあるスポーツ選手が結婚した記事。その選手がSNSで結婚を報告したことをメディアが取りあげたものだったが、記事のコメント欄に並んだのは“祝福の言葉”だけではなかった。
その選手の今の立場や収入に言及し、
<奥さんはとても大変だ>
<結婚生活の大変さを理解できていない。そんなに甘くないです>
<その収入で良く結婚できたな>
などと、めでたい話に水を差すようなコメントも入り混じった。ちなみに、その選手の年俸は公表されていない。
著名人や知人であっても、その人が誰と結婚しようがその夫婦の生活がどうであろうが、基本的には自分の生活への影響はないはずだ。仮に大ファンの著名人なら「〇〇ロス」になったり、昔好きだったり憧れていた人の結婚ならちょっと複雑な気持ちになったりすることはあるかもしれないが、少なくとも実害が生じる恐れはない。
なのに、人間はなぜ他人の結婚がそんなに気になってしまうのか。
■人間が「結婚を求める生き物」のワケ
小室圭さんと眞子さんのように激しくバッシングされるケースもあれば、身近な人の結婚について、あれやこれやと意見したりする人もいる。
恋愛や対人関係の心理を長年研究してきた元立正大学教授の川名好裕さん(昨年、定年退職し現在は非常勤講師)は、まず、人間にとって結婚とはどのような存在かについて、心理学の「欲求」という視点からこう解説する。
「そもそも人間とは欲求の塊で、快楽と幸福を得るために生きているのです。心理学にはその欲求として、『快楽原理』と『生存原理』というものがあります。前者には食欲や性欲が当てはまりますが、恋愛や結婚は、その性欲の範疇(はんちゅう)に入ります。つまり、人間にとって好きな人と結婚するということは、大きな快楽を伴う行為なのです」(川名さん)