■切り取ってすっきりしたいと思う人もいれば、手術に抵抗感をもつ人もいる

 最初に放射線治療を受けると、組織の癒着が起こり再発時に手術が難しくなり、合併症が増えてしまいます。済生会横浜市東部病院泌尿器科部長の石田勝医師は、次のように話します。

「がんがある前立腺を取ってすっきりしたいから手術を受ける、手術でからだを切りたくないから放射線治療を受けると、半数ぐらいの人は受診前にある程度考えています。若い患者さんは手術を受けるにあたり体力的な心配が少なく、将来再発してしまったときに放射線治療の選択肢もあるため、迷っている場合には手術を提案します。最初に放射線治療を選んだ人では、再発して手術が選択できても、手術を希望せずホルモン療法を受ける人が多いです」

 年齢や持病などで体力に不安がある場合は、手術と放射線治療以外にも選択肢があります。

「80歳を超えてきたら、前立腺がんがあっても寿命に影響はなく、治療は不要と考えられており、監視療法をすすめます。がんが進行してきても、薬を使うホルモン療法をおこなうことで、10年間がんで亡くなる率は極めて低いです」(西山医師)

 ホルモン療法では、薬によって男性ホルモンの分泌を抑えます。前立腺がんは、男性ホルモンの刺激で進行するので、その進行の勢いを抑えるのです。

 なお、監視療法をすすめられても、治療したいと希望することもできます。その場合は、全身麻酔などの必要がない放射線治療がすすめられることが多いようです。

 転移性がんの場合は、手術や放射線治療では根治できず、ホルモン療法、化学療法がおこなわれます。新しい薬が使えるようになったり、薬による治療に放射線治療を併用するなど、治療法が進歩し選択肢が増えています。

(文・山本七枝子)

【取材した医師】
筑波大学病院副院長 泌尿器科診療科長 腎泌尿器外科教授 西山博之 医師
済生会横浜市東部病院泌尿器科部長 ロボット手術センター長 石田 勝 医師

筑波大学病院副院長 泌尿器科診療科長 腎泌尿器外科教授 西山博之 医師
筑波大学病院副院長 泌尿器科診療科長 腎泌尿器外科教授 西山博之 医師
済生会横浜市東部病院泌尿器科部長 ロボット手術センター長 石田 勝 医師
済生会横浜市東部病院泌尿器科部長 ロボット手術センター長 石田 勝 医師

「前立腺がん」についての詳しい治療法や医療機関の選び方、治療件数の多い医療機関のデータについては、2023年2月27日発売の週刊朝日ムック『手術数でわかる いい病院2023』をご覧ください。

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