手術と放射線治療は、主に転移のないがんにおこなわれます。低~中リスクでは、どちらも根治を目的とした治療で、治療後の生存期間に大きな差がないといわれており、治療後の生活などに適した治療方法を選択する必要があります。

 手術では、なかを通る尿道を含む前立腺全体と、精嚢、精管などを切除し、膀胱と残った尿道をつなぎます。現在、多くはロボット手術でおこなわれています。

 放射線治療は、放射線をからだの外から当てる外照射と、放射線を出す物質を前立腺に埋め込む内照射があります。外照射では、正常な組織に当たる放射線を減らす技術が進歩しており、放射線を多方向から照射し病巣に集中させる「強度変調放射線治療(IMRT)」などがおこなわれています。

 また、重粒子線、陽子線によるものも一部でおこなわれています。内照射には、前立腺に線源を入れたままにする「永久挿入密封小線源療法(LDR)」と、線源を一時的に入れ高線量を当てる「高線量率組織内照射(HDR)」があります。

 手術と放射線治療では、治療にかかる時間が異なります。手術の入院期間は7~14日間、放射線治療では入院の必要はありませんが、通院期間が約2カ月間です。

 筑波大学病院泌尿器科診療科長の西山博之医師は、次のように話します。

「仕事をしている人の多くは、治療に伴う拘束期間で悩みます。手術を受けたいが休みをとるのが難しいので放射線治療を受ける人もいます。仕事で頻繁に通院できないからと放射線治療ではなく、手術を受ける人もいます」

 合併症については、手術では、しばらくの期間は尿失禁(腹圧性)がありますが、時間とともに改善し90%程度の人は概ね回復します。勃起に関係する神経は前立腺の表面に貼りついているため、手術により勃起障害が起こります。がんの取り残しの恐れが少ない場合は、神経を温存する手術方法も可能です。なお勃起障害が回復した場合でも射精はできません。

 放射線治療では、治療中から始まり治療終了から半年~1年程度続く頻尿、治療後数年経ってから起こる膀胱や直腸からの出血などがあります。勃起障害は個人差がありますが、治療後しばらく経過すると射精機能はなくなることがほとんどです。また、ホルモン治療を併用すると性欲が減退します。

 排尿に関する合併症が選択のポイントのひとつになることがあります。尿失禁は困る、嫌だと放射線治療を選ぶ人もいるし、夜間頻尿だと眠れないが、尿失禁ならパットで対処できると手術を選ぶ人もいます。

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