そういうのもあって、学校通いづらくなりました。『学校行っても、勉強分からへんし。母親はうつひどくなったら、しんどくなるしな』って。『だったら、家おったほうがいいわ』って。でしたね。
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いつ母親が入院してショウタさんが一時保護になったのかという日付はあいまいだった。ともあれ、一時保護は母親からも学校からも離れた状態である。転校と同じように強制的にもとの学校から遠ざけられる。この場面でも、ショウタさんが淡々と語っていたが、先生が味方をしてくれなかったという理由が語られた。母親から目が離せない、勉強についていけない、おなかが痛い、学校が味方してくれない、と不登校の背景にはこれら複数の事情が重層的に重なっている(斎藤環『改訂版 社会的ひきこもり』PHP新書、2020、115頁)。
■母親の理不尽な怒り
さて、不登校のなかでのヤングケアラーを描写した語りと並行して登場するのが、母親にとって「自分が一番」ということと同じくらいショウタさんにとって大事な母親の特徴である。
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【村上】じゃあ、その頃ってもう、おうちのこと全部、やってた感じなんですか。家事とか。
【ショウタさん】ご飯炊いたりとか、洗い物するぐらいはできたんですけど、掃除とかになると、汚いまんまやったから、普通にゴキブリ出るしみたいな感じでしたね。母親が寝込んで起きたときに、片付けてなかったら、めちゃくちゃ怒るんですよね。多分、精神的にしんどいでしょうね、起きて。起きたときに汚かったら。『しゃあないかな』って、今、考えたら思いますね。
【村上】多分、「今、考えたら」って、さっきもおっしゃってたと思うんですけど、今、振り返ると分かるけども、お母さんの気持ち。分かるけども、ちっちゃい頃って。
【ショウタさん】ちっちゃい頃は結構、理不尽なことで怒られることが多くて。例えば、母親がものすごい怒ってるときがあって、僕は別になんも感じてないから、なんも思わないじゃないですか。普通に過ごしてるじゃないですか。やのに、母親が、「私が怒ってんねやから、おまえも怒れよ」みたいな。『何を言ってんやろ、この人?』って。めっちゃ怒るんですよ、それで。「いや、俺、関係ないやん」とか。
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