社会人野球からNPB復帰という例は極めて少ないが、年齢的にまだ可能性がありそうなのが昨年から三菱重工Eastでプレーしている山下航汰(元巨人)だ。育成ドラフト1位での入団ながら1年目にいきなりイースタンリーグで首位打者を獲得。ちなみに高校卒1年目の選手が二軍で首位打者を獲得したのは1992年のイチロー(当時オリックス)以来の快挙である。1年目には支配下登録されて一軍でもヒットを放ったが、その後は怪我もあって低迷。2021年オフに育成での再契約を断って他球団への移籍を目指したが、結局オファーはなく三菱重工Eastに所属することとなった。

 社会人として1年目の昨年は層の厚いチームにあってベンチを温める試合も多く、ようやくスタメンの機会を得た日本選手権でも3試合(スタメンは2試合)でノーヒットと結果を残すことができなかった。ただ今年で23歳ということを考えれば大学卒1年目と同じ年齢であり、既に一度二軍で結果を残していることを考えればまだまだここから巻き返す可能性はあるはずだ。まずは社会人で誰もが納得するような成績を残してアピールしてもらいたい。

 過去に独立リーグから復帰した選手は苦戦することが多かったが、昨年は四国アイランドリーグの高知からソフトバンクで復帰した藤井皓哉は中継ぎとして大車輪の活躍を見せてこのオフには大幅年俸アップも勝ち取っている。何かのきっかけで大きく変わる選手も間違いなくいるだけに、ここで紹介した以外の選手からも第2、第3の藤井が出てくることを期待したい。(文・西尾典文)

●プロフィール
西尾典文 1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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