■自分が悪いんじゃないか
作品のなかで多いのは祖母の食事の場面だ。自宅や別荘のほか、旅行に出かけたときの食事のシーンもある。
「食事をしているときは絶対に撮ります。なので、おばあちゃんが『いただきます』って言っているカットはすごくたくさんある。食べることと、生きることって、直結しているじゃないですか。だから、何かを食べている姿にとても魅力を感じます」
一方、「ご飯を作ってあげても、もうそんなに食べられない。何かを食べたいという欲求がすごく減った」と感じている。
そんなことを含めて、ファインダー越しに祖母の姿を見ていると、自分がしていることが客観的に見えてくる。撮影した写真を見るたびに、もっと優しく接しなければ、と思う。「それがいいルーティンになっている気がします。それが一番大きいですね」。
「おばあちゃんによくしてあげたいけれど、どうにもならないおばあちゃんに対して怒っている自分がいる。それが自分に跳ね返ってきて、自分が悪いんじゃないかって、考え込んでしまう。でも、写真に写ったおばあちゃんのハッピーな表情を見ると、落ち着けるというか、気をつけなければいけないなと、毎回、毎回、思います」
■「自分の親も同じです」
ただ、中山さんは、自分が孫だからこそ、このような距離のとり方ができている、とも思う。
「父が祖母と2人でいると、ずっとけんかしてしまうんです。父が祖母によかれと思ってしたことに対して、祖母は心にもないことを口にしてしまう。それを繰り返してしまう。父はもうどうしたらいいのか、という感じで……」
中山さんは以前、グループ展で祖母の写真を展示した際、「自分の親も同じです。お父さんの気持ちはすごくわかります」と言われた。
「同じようなことを考えている人が世の中には大勢いる。そういう人が私の作品を見て、共感してくれたらうれしい。私もそれで救われるというか」
父親と中山さんが相談してデイサービスを利用することを決めたとき、「デイサービスに通わせるのはどうなの?」と、言う人もいた。
「高齢者の世話は絶対に家族がしなければ、と思う人はいるかもしれません。でも、父と私だけでは祖母の面倒をみるには限界があります。私は家族以外の人の力を借りて、介護される本人も幸せなほうがいい。この作品がそういうことを考えるきっかけになればいいな、と思います」
(アサヒカメラ・米倉昭仁)
【MEMO】中山優瞳写真展「海の向こうに」
ニコンサロン(東京・新宿) 1月31日~2月13日