※写真はイメージです(写真/Getty Images)
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これまで、適量のアルコールは「百薬の長」と信じられてきたが、近年の研究では、少量でも健康に害を与えることが明らかになった。新たな事実が浮き彫りになり、世界各国で節酒を呼びかけられる昨今、アルコールとの上手な付き合い方を医師に聞いた。

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 昔から、お酒の飲みすぎは体に悪いが、適量であれば健康につながると認識されていた。その理由には諸説あるが、たばこと違って「この量までは飲んでも大丈夫」という閾値(しきいち)があると考えられていたことが影響している。

 しかし、「2018年に、世界的権威のある医学雑誌『ランセット』誌に掲載された論文によって、アルコールに閾値がなかったことがわかった」と、中島クリニック院長で内科・消化器内科医の中島敏雄医師は話す。

中島クリニック院長 中島敏雄医師
中島クリニック院長 中島敏雄医師

 この論文は、59万9912人の飲酒者データおよび、飲酒量と病気の関係を研究した83編のコホート論文を統合した大規模なもの。閾値がなかったことに加えて、1週間に純アルコール量100g以下(ビールなら1日500ml程度で純アルコールは20g)であれば、まったく飲まない人同様に健康リスクがほぼないこと、少量のアルコールであれば、心筋梗塞などの心臓病発症のリスクが低くなることがわかった。

 その一方で、「アルコール量が増えれば、脳卒中をはじめとする心不全、がんといった病気のリスクが上昇することも判明しました」と中島医師は言う。

 さらに別の角度からも調査や研究は進んでいる。2022年11月には、2015年から2019年に死亡した20~64歳のアメリカ人のうち、およそ8人に1人はアルコール関連死であることが発表された。同国で過度のアルコール摂取による死亡者数は毎年約14万人に上るという。また、カナダ薬物使用・依存症センター(CCSA)では、2023年1月にアルコール摂取に関する指針を12年ぶりに改定。世界中で、「飲酒するなら量を減らすのが好ましい」という共通認識が広がりつつあるのだ。

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健康リスクを避けながらアルコールを楽しむには