自治体の経済格差があるのは確かだ。

 ただ、それ以上に感じるのは、「ヒト」の意識の格差だ。ここでいう「ヒト」とは、各自治体の教育施策に携わる担当者。具体的には、教育委員会内の情報教育担当の指導主事や事務系の管理職。もしくは、教育全般をフォーカスし方針を打ち出す教育長、首長も考えられる。縦割り行政と称される組織で、予算案のキャスティングボードを誰が握るのか。まさに、このポジションがキーパーソンになる。

 多くの自治体は、担当者から次年度の予算要求の段階でプログラミング教育の全面実施と情報教育の必要性を説き、交渉にあたる。つまり、担当者がどれだけ必要性を認識し、財務担当者に説得できるかがポイントとなる。構造としては、現場からの要求であるボトムアップ型と言えよう。それに対して、自治体の教育委員会の事務執行責任者である教育長や、自治体の行政機関の長である首長の考えがバイアスとなるトップダウンもあり得る。

 例えば、「プログラミング教育」を前面に打ち出した石川県加賀市や、ICTを市民生活に活用した「スマトーシティー」愛媛県西条市のように、市長をリーダーに市政に臨んでいる自治体もある。両市とも、私は教員研修で数回訪問しているが、他の自治体に比べて教育委員会全体のプログラミング教育の意識の高さを認識する。(積極的に取り組んでいる自治体に関しては、全国ICT教育首長サミットにおける「2019 日本ICT教育アワード」をご覧いただきたい。)

 プログラミング教育を進める我々にとっては、ボトムアップでもトップダウンでもよいので、目の前の子供達のため、早急にプログラミング教育の環境を整えて欲しいだけである。最悪なのは、自治体に財政耐力もなく情報教育担当者も教育長、首長も認識が薄い場合は、東京から3年遅れの導入が目に見えている。

            
 すでに東京と地方では、プログラミング教育の進捗に年単位のタイムラグが生じているといわれている。

 未来の社会を支える子ども達のために、まずは一人ひとりが現状を把握し、プログラミング教育に意識をもつことが大切だ。国民レベルの発信が広がることこそ、自治体をも動かすムーブメントになるのでは……と強く思う。

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