61歳で公立小学校の校長を定年退職した福田晴一さんが「新入社員」として入社したのはIT業界だった! 転職のキーワードは「プログラミング教育」。今回は、前回に引き続き、全国を教員研修で回るうちに見えてきた「格差」を取り上げる。
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小学校のプログラミング教育必修化に伴い、国からは、単年度1,805億円の地方財政措置が講じられていることは前回述べた。しかし、この予算は実際にはICT環境向上のために使われていない自治体もある。それはなぜか。
実はこの予算は、地方自治体が自由に使える「地方交付税」であるため、他の使途に財源が回されてしまうことが多いのだ。
例えば、昨年は記録的な猛暑になり、学校内で児童が熱中症で死亡する、という事故が起きた。この事故から、公立小中学校のエアコンの設置の重要性が論議された。もし、同じような学校環境なら、ICTよりエアコンが優先されるだろう。また、地震で学校の外壁が崩れ、児童が下敷きになって死亡する、という痛ましい事故も起きた。これによって、外壁やフェンスを緊急点検した学校も多かった。もし問題ありとなれば、耐震工事が優先される。つまり児童生徒の命に関わる案件があれば、最優先される予算である。
安全確保の観点から当然の対応だか、自治体によっては、公立小・中学校の空調整備や外壁補修に対応する予算があり、順次執行されていれば、国からの地方財政措置は本来の目的のICT環境整備に回されるはずである。
つまり、自治体の経済格差が学校内の教育の格差を生み出していることになる。
政府は、地方財政措置が目的の実現に至っていないことも認識している。
地方には地方の経済状況を背景に、取り組みたくとも実現できない課題がある。となると、法改正、条例整備等の対応で、日本の公教育の強みである機会均等の環境を整備しなくてはならないのではないだろうか。学校内の教育で格差が生じやすく、いや実際に生じているプログラミング教育の格差は、やはり、公的な教育施策で機会均等にベクトルを戻さなくてはならない……と、全国の研修会を回る中から痛感する。