このため、自分の病気を知る目的で5年生存率を参考にする場合は、まずがんの種類、病期を確認したい。注意したいのは、5年生存率を示す数字は、本人や家族にとって希望につながることもあれば、絶望を感じることもあることだ。数字の捉え方は人によってさまざまであるほか、進行しているIV期の場合はショックを受ける人が多いだろう。
例えばIV期で5年生存率20%の場合、自分が5年後に生きている確率は20%と捉えがちだ。しかしそれは少し違う。
「生存率は年齢や合併症などによっても左右されます。自分と全く同じ背景の人たちだけを集めたデータではないので、あくまで平均的な目安として捉えてください」(伊藤さん)
また、5年生存率のデータは5年以上前に診断、治療を受けた人の治療成績であり、データを集計、分析するのに2年程度は要することを考慮すると、最も新しいデータでも7年ほど前に診断、治療を受けた人のものになる。大阪大学病院消化器外科教授の土岐祐一郎医師はこう話す。
「近年、がんは免疫療法などの薬物療法が大きく進歩しています。当時の状況とは違うことを理解してほしいと思います」
一方、心臓病で手術を受ける場合、治療成績の指標となるのが、術後30日以内の死亡率だ。賛育会病院院長の高本眞一医師はこう話す。
「心臓手術は多くの場合、心停止状態にして人工心肺を使用しておこないます。手術そのものが直接的に命に関わるほか、術後も急変することがあります。術後死亡率は手術がうまくいったかどうかの指標になるのです」
心臓病は主に冠動脈が詰まるなどして心筋に血液がいかなくなる「虚血性疾患」、心臓の弁に異常が起きる「弁膜症」、心臓から全身に血液を送る大動脈の異常で起こる「大動脈瘤・大動脈解離」がある。
手術はそれぞれ「冠動脈バイパス手術」「弁置換術・弁形成術」「大動脈手術」となり、方法が異なる。このため、術後死亡率は、自分が受ける予定の手術方法の数字を確認することが、基本となる。